■■7章「駆動装置」(松山 晋作)

●p.139
 「軌間が広い私鉄車両へ直角カルダンが用いられました」とありますが、これは事実でしょうか?直角カルダン車は、東急5000系、東武5720系、相模鉄道の多くの形式の車両等、いずれも軌間は1067mmの狭軌です。P275にも狭軌の小田急で、直角カルダン車の走行試験の記載があります。

<回答>
 この文章は平行カルダンを念頭においていたため確かに正しくありません。正しくは、「日本における導入は、1950年代(昭和25年以降)狭軌台車でも構成しやすい直角カルダンが先行、ほぼ同時期に平行カルダンも軌間が広い私鉄電車から実用化されました。」と記述すべきでした。

◆参考文献:東洋電機技報 109号(2003-11)
1951年:
各社で電動機の台車装荷駆動システムの研究が始まる。
狭軌が多い我が国の電鉄では、自動車の技術を応用して、比較的容易に高い減速比が得られる直角カルダン方式が最初に実用化された。これにより主電動機の回転速度を上げて軽量化が可能になった。
1952年:
我が国初の平行カルダンは、スイスBBC社のディスク方式にヒントを得た中空軸方式、米国のWN継手に似た中実軸歯車式の二種類、京阪神急行(阪急)京都線(標準軌)で現車試験。
1953年:
京阪電鉄(標準軌)1800形、平行カルダン実用化、「1801号車」中空軸カルダン(電動機側はゴムと歯車継手、ピニオン側はタワミ板継手、東洋電機)、「1802号車」中実軸WN継手(三菱電機)。
東武鉄道(狭軌)5720形、直角カルダン(東芝)採用。(Wikipediaによれば、トラブル多く、1961年吊り懸け式に戻されたいきさつあり)
1954年:
名鉄(狭軌)、南海電鉄(狭軌)、西鉄路面電車(標準軌)、タワミ板方式平行カルダン(東洋電機)。
小田急電鉄(狭軌)、直角カルダン(三菱電機)納入
東急(狭軌)5000形(モノコック構体)、直角カルダン
1956年:
富士急、初の狭軌用WN継手平行カルダン(三菱電機)
1957年:
小田急3000形SE車、(狭軌)中空軸タワミ板平行カルダン(東洋電機)
国鉄101系、中空軸タワミ板平行カルダン採用(東洋電機)
1960年:
新幹線車両にWN継手平行カルダン採用(三菱電機)
1969年:
京王電鉄(馬車ゲージ) 中実軸タワミ板継手(東洋電機、TD継手と呼称)